2012年12月15日土曜日

金とフリーとオープンソース

まず最初に断っておきますが、オチはありません。

また、内容も特に独自の視点的目新しさは、無いと思います。

自分の知っているソフトウェアに関連して、今年そういうことを感じたなあ、と思ったことを、ただ吐き出してみるエントリです。

一応ソフト名は伏せます。そのソフトでないと成立しない、という内容でもないので。

1. あるソフトの開発者の方が、こんな意味のことを、ツイートだったかリツイートだったか、していました。

スタバで喜んでラテに 300 円払う、その同じ人たちが、ぼくのアプリが 300 円と聞くと『なんだって!ふざけんな!』と叫ぶんだ。でも、ぼくが数ヶ月かけて作ったアプリに、本当にラテ一杯の価値もないのだろうか

うろ覚えなので、本物のツイートではラテじゃなかったかもしれないし、その方は日本人じゃないので、円じゃなく、なんか外国の通貨だったと思う。でもまあ、意味としてはそんなようなことでした。

たしかにね、自分はコーヒー中毒なわけですよ。それも缶コーヒーじゃダメで、喫茶店のコーヒーじゃないといけない。たぶん月に3万円くらい使ってる。日割りすると一日千円くらい。でもタバコは止めたので、これでも昔より出費的にはマシなんですけれどね。

そんな小遣い事情は、どうでもよろしい。

つまり自分も、コーヒー一杯 300 円は抵抗ないわけです。もうほとんど考えていない。嗜好品って、思考停止品ってことなんでしょうけど。でも、なんかのアプリに 300 円っていうと、ちょっと考えてしまう自分がいるわけです。企業ユースは別として、いつの間にか個人ユーザー向けのアプリって、無料か数十円が当たり前みたいな風潮に慣らされてしまっているわけですけど、でも本当にその価格って妥当なのかな、と。

もちろん、そのアプリをぜんぜん必要としていない人たちにとっては、たとえ一円でも高いでしょう。でも、そのアプリを使って毎日を少し楽しく、あるいは便利に過ごせたり、ルーチンワークが改善されたり、できなかったことが「できる」ようになるのであれば、コーヒー一杯分くらいは喜んで払いたいです。作者さんにも、それくらいは潤ってほしい。

市場原理の要請ってものもあるでしょうし、そんな単純な話ではないのかもしれませんが、人情としては、そう思います。


2. ある人が、あるオープンソースのソフトについて、不満を訴えているのを見かけました。

「不満を訴えている」というのはソフトな形容でして、実際は罵詈雑言に近いんですけれども、それ自体は別に珍しくありません。巷でよく見かける日常風景でございます。

不満の内容は、そのソフトにその人が必要としている機能が欠けているというもの。なんでこんなことができないんだ、というわけです。でもね、その「できない」とされている機能って、自分が見ると相当ニッチで、無くてもまったく不思議ではないものに見えるのです。仮にそういう機能を付けた仕様書を見せられたら、「こんな機能、誰がほしがるの?」って言っちゃいそうな。まあ人間って、自分のことを客観的に見るのは難しいものですし、こう言うとアレですけれど、自分のニーズの前に世界がひれ伏すべきだ、と思っている人は Office 界隈で見慣れております。なので、このこと自体も、別に珍しくありません。やはり、巷でよく見かける日常風景でございます。


見慣れてなかったのは、その後。

結局その方は、ソースコードを改変して自分が欲しかった機能を追加したそうです。メデタシメデタシ…じゃないんですね、これが。

「オレにコンパイルなんかさせやがって!

と憤っているわけです。

これにはさすがに驚きました。

自分の感覚だと、ソースコードが開示されていて、それを改変して自力でコンパイルできるっていうのは、すごくありがたいことなんです。

たとえば自分は Office 製品とのつきあいが長いです。仕事上でももちろんですけれど、個人でも高い金払って自宅用にライセンス購入してます。でも、金払ったからって、別にそれで自由に自分の欲しい機能を追加してもらえたりは、ぜんぜんしません。別に MS 製品だから悪、とか言ってるわけじゃなくて、Apple だろうが Oracle だろうがどこだろうが、プロプライエタリのクローズドソース製品って、そういうものです。

だから、無償でソフトのソースコードが公開されているという時点で、すごいわけです。で、自分の知っている昔って、ビルドの苦労は買ってでもしろやっていう時代ですから、バイナリがダウンロードできて当たり前の現在なんて本当、夢のようです。

なんかジジイの回顧話になってますが、話を戻して、つまり自分は、ソースコードを改変して自分が欲しかった機能を追加できたら、手を合わせて

コンパイルさせてくれて、ありがとう!

って言うことに南極条約で決まっているものだ、と思いこんでいたのです。

そんな時代じゃないんですね、もう。

そもそも OSS って、必要であればあなたも独自にコンパイルできますよっていうのが利点として語られていたと思っていたのですが、いつの間にかそこがデメリットになっていたようです。勉強になりました。


3. あるソフトの話です。

ここまでの話で出てきた 1 のソフトも 2 のソフトも、インストールこそしてはいますが、実際にはほとんど使っていないソフトの話でした。

でも、このソフトは日常的に使用しています。しかもフリーソフトです。本当、助かっています。

ある日、これはぜひとも作者さんに何がしかの寄付でもしないと YU-TANG の名がすたると思い立ち、調べてみました。

その結果、寄付できなかったんです。

作者さんが大富豪で、金を一切受け取らなかったから、ではありません。

そのソフトを作成したツールに、そのツールで作成したソフトから利益を上げてはならない、という規約があったんです。そのため、作者の方はそのソフトに対して一切金銭を受け取れない状態でした。

世の中には、ブラックホールのように金を吸い取る気満々のコンプガチャ的な何かがゴロゴロ転がっているというのに、よりによってユーザーの方から喜んで対価を払いたいと思うソフトに限って、一銭も払えないという理不尽な状況があるのですね。


そんなことを考えた 2012 年でした。

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